燕山行 PART1~これが女王か。~
前回のあらすじ
テント泊行きたいけど行けない!イライラする!ムカつく!山行く!詳しくはこの記事をチェックだ!
燕岳に行くことを決めた俺は期待と不安を抱えて通勤通学ラッシュの電車に乗った。こんなにでかいザックを背負って通勤電車に入るのは本当に邪魔だろうなぁ。すまんな。時間はあるがお金はないので全て鈍行だ。八王子で中央線に乗り換え、高尾駅、甲府、松本で乗り継ぎながら穂高駅まで向かう。あずさは速そうで羨ましい。でも鈍行は好きだ。こじんまりした車内の中で本を読み、時々外を見て見たことの無い景色や、憧れの山を眺める。これをやっていると自分はどこにでも行けるという快感と、旅先はどんないい場所なのだろうという期待感が溢れてくるのだ。甲府駅や松本駅で乗り換える時に自分は徐々に日常から遠ざかり山に近付いているぞという感覚は特急では味わえない。この感覚が自分は旅をしていると実感させてくれる。
昼前に穂高駅に着いた。穂高駅の駅前はこじんまりした店が道路の両端に並んでいた。来たことのない場所に一人で来るのは快感だ。楽しい。バスに乗るとずんずん山に向かって進んでいった。中房温泉までの山道は紅葉真っ盛りだった。鮮やかな黄色のトンネルの中をバスは進んでゆく。中房温泉に着いたのは15時過ぎだったと思う。中房温泉は紅葉した木々に囲まれてぽつんと穏やかに建っていた。
1日目は中房温泉で泊まって2日目は燕山荘のテント場で泊まり、3日目に帰るという予定だ。テントを張るのは中房温泉が初めてとなる。
テントを張ってテントの中に入ってみた。この外はもう自然の中だ。これがあればどこに行っても泊まることができる。かなり自由を感じた。
朝は3時半に起きた。食欲はなかったが何とかご飯を食べてダラダラテントを片付けていたら5時半になっていた。初めはただひたすら樹林帯の中を登ってゆく。カラマツは黄色く染まっているし、広葉樹も紅葉しているのでなかなか楽しく登ることが出来た。登っている途中に女性の方と初老の男性と出会ってお話をした。お互い初の北アルプスだという。
天気は良くない。灰色の雲が頭上を覆っている。つい先日知り合った大学OBのお兄さんによると11時から雪が降るらしい。それに間に合うように燕山荘まで行かないとな。
合戦小屋から上部から木々の高さが小さくなってゆき森林限界に近づいてゆく。
しかし、周りは既にガスの中で景色は何も見えない。さすがにキツい。テントを背負ってきた重さがここに来て結構来た。周りも見えないし面白くないなぁ。早く登り終わってくれないかな。何度か休憩を挟んで燕山荘に着いた。
何も見えないじゃないか。結構疲れたぞ。ここから北アルプスの稜線を見るはずだったのに。稜線に出たら北アルプスのパノラマがバッと広がるはずだったのに。言ってても仕方ないので燕山荘でテントの受付をしに行った。
燕山荘は入口が広く、グッズも多く売られている。食堂のメニューのバリエーションはかなり多い。なんだこれは。めちゃくちゃ綺麗じゃないか。これが山小屋なんて嘘だろ。燕山荘は今まで行った山小屋の中で1番綺麗だった。すげぇ。そのうちここで泊まりたいなぁ。
テントを張っていると雪が降ってきた。すげぇほんとに雪が降るんだなぁ。早く登ってきて良かった。でも今日は景色が全く見えないんだろうなぁ。暇つぶしするために燕山荘にある本を読みに行くことにした。
燕山荘ではコーヒーを自分で作っているおじさんとお話をした。いつもは夕方になるまで歩き続けるらしいが今日はこの天気なので燕山荘に籠ることにしたらしい。バイクも持っているらしく、バイクの良さも教えて貰った。この間は吹雪のようになっていた。
山荘の中が熱くなってきたので外に出ることにした。空気がキーンと冷えている。地元で雪が降り、外で遊んでいた時と同じ空気だ。
ハハハ、テントに雪が積もってらぁ。初のテント泊で雪が降るとはたまげた。凄いときに来てしまったもんだ。
おや?青空が.........。雲が流れるぞ。
これが女王か。
奇妙な形をした花崗岩とうっすら被る雪。こんなに.........。天気が良くなったので燕岳の山頂に行くことにした。
今まで白いベールで覆われた絶景が顕になってゆく。しかも、雪を纏ってより美しい姿で。俺は燕岳に認められたんだな。
山頂。ここはかなり狭かったけど景色は抜群だ。雲がどんどん晴れてゆき、黒部源流部や劔岳まで見える。なぜ写真を撮ってないのだあとは.........。
やっと見えるようになった。槍ヶ岳だ!ほんとに尖ってるのか!雲を纏った姿が本当に素晴らしい。
山頂から燕山荘に戻るまでも最高なんだ。
全て見せてきたな。こんなに楽しい道はないだろう。
まだ見せてくれるのか!人だかりがあると思ったらいた。冬毛になる途中なのかなぁ。
全部の景色を楽しみながら燕山荘まで戻ってきた。今まで見たことの無い景色が見れるのは本当に素晴らしい。これは山登ってる理由のひとつだ。しかし景色を楽しむ時間ももう終わり。
日が沈み、一日が終わる。まさかあんなに曇ってたのにこんな景色が見られるなんて。素晴らしい一日だった。